1.統合失調症に対する抗精神病薬の使用を調べたCATIE試験では、患者1,432人のうち74%が割り付けられた薬剤の摂取を18ヶ月以内にやめていた。その主な理由は薬剤の「耐え難い副作用」、あるいは薬剤が「効かなかった」ことにあった。また非定型抗精神病薬が標準的な抗精神病薬より良い結果を生むこともなかった。



2. 早期発症型統合失調症 (精神分裂症) スペクトラム障害のある10代の若者を対象としたTEOSS研究において、抗精神病薬に反応し、1年間うまく薬剤の服用を続けることができたのは、最初のコホート集団のわずか12%に過ぎなかった。



3."British Journal of Clinical Pharmacology (英臨床薬理学)"誌の最近のエディトリアルは、"消えゆく精神薬理学"と題してこの分野の悲惨な状況を詳細に取り上げている。それによると、2010年にFDAが承認した精神科薬はわずかに2種。それも広い意味で「精神あるいは脳疾患への適応」と定義されるもので、実際には他の適応で以前から使われていたもの。全くの新薬にあたるものはもう長期間市場に出ておらず、「この分野のパイプラインに明るい見通し」はまったくないという結論であった。



4.先ごろ行われた連邦による調査により、なんとも荒涼とした相違が浮き彫りになった。メディケイド(一定の条件を満たす低所得者ならびに一定の疾患を持つ患者を対象とした公的医療保障制度)で医療費が支払われる子供たちは、親が民間の医療保険に加入している子供に比べ、強力な抗精神病薬を服用させられている割合が4倍も高いことが判明。



5.『アルツハイマー治療薬は脳に損傷を与え、記憶喪失を引き起こすことが明らかに』(この記事はメディアによる誘導ではないかというKKさんのご指摘がありました)
" Wednesday, April 21, 2010 by: S. L. Baker, features writer
現在アルツハイマー病 (AD)の有効な治療法として人間に対して使われているビッグファーマの治療薬が、治療するはずの脳の損傷や記憶喪失すら引き起こしている可能性がある。カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD) の科学者によるこの革新的な発見は、はこのほど米国科学アカデミー紀要に発表されたもの。



6.パーム・ビーチ・ポスト紙 ( Palm Beach Post) が5月にシリーズで取り上げた注目すべき記事は、フロリダ州の青少年司法局が抗精神病薬を少年院などに文字通り垂れ流し、連邦政府の監督機関が何があっても承認しないようなことを理由に、「日常的に」入所者の若者にばら撒いていたことをあばいた。それも信じがたいほどの数なのだ。「例えば2007年には、イブプロフェン (ありふれた解熱、鎮痛、抗炎症薬) の2倍もの量のセロクエルを青少年司法局が購入。2年間でトータルで326,081錠ものセロクエル、アビリファイ、リスパダール、その他抗精神病薬を州少年院や児童施設で使用するために購入・・・つまり、これら施設の合計収容人数が2,300人であることを考えれば、2年間、毎日休みなく446錠が少年院や矯正プログラムを受ける少年、少女たちに配られていた計算である」。さらに同紙がつかんだのは、「過去5年に青少年司法局と契約を結んでいた精神科医の3人に1人は、抗精神病薬メーカーである製薬企業から講演謝礼金を受け取っていた」という事実であった。



7.報じられるところでは、介護施設の医師への売り込みにMRが使ったスローガンは、"five at five"- つまり、夕方5時に5ミリグラムのジプレキサで鎮静をかけ、介護者の負担を軽減しようとするものであった。FDAがリリー社に対し、そうした薬の使い方は承認外であり、高齢の患者には肥満や糖尿病の原因となると警告したのちも、こうした習慣は長期間続いた。



8.エリオット氏は「マザー・ジョンズ」誌に次のようにレポートしている。「ランセット誌に掲載された別の大規模分析から、ほとんどの非定型薬が実際には古いタイプの薬ほど効果がないことが判明している。これについて同号に掲載された二人のイギリス人精神科医、"British Journal of Psychiatry" 誌のエディターであるピーター・タイラー博士 (Dr. Peter Tyrer) と、英国王立精神医学校 (the Royal College of Psychiatrists) のティム・ケンダル博士 (Dr. Tim Kendall) の書いたエディトリアルは非常に手厳しいもので、「非定型薬という偽りの発明は、マーケティングを目的に製薬企業が巧妙に操作しただけのものであり、ようやく今になってそれが暴露されたに過ぎないものであるとみなされよう」というものであった。



9.FDAは月曜日、妊娠後期の女性が非定型抗精神病薬として知られる薬物群を服用した場合の胎児に対する危険性について、警告ラベルを強化すると発表した。統合失調症や双極性障害治療薬として使用されるこの薬物群には、エビリファイ、ジオドン、ハルドール、リスパダール、セロクエル、ジプレキサなどの有名な薬も含まれている。FDAは、ほとんどの医師がすでにこの潜在的な問題を十分認識しており、その周知徹底をはかるのが今回の目的であるとする。離脱症状、異常な筋肉運動 (錐体外路兆候) 、過剰な眠気、震え、呼吸困難、摂食障害など、こうした薬物に関連する問題のある新生児が2008年10月29日以前に69件、FDAに報告されていたとしている。



10.2009年に米国で非定型抗精神病薬が処方された件数が5200万件に上るとし、この種の薬が今日処方されている精神病治療薬の大部分を占めている。



11.米国で急速に増加している抗精神病薬の投与が患者の脳の委縮に関連していることが新たな研究から判明し、こうした処方薬に対する新たな疑問がもたれている。この研究は14年にわたって行われ、新たに統合失調症と診断された患者の脳を定期的にスキャンし、全体積と脳の主構成部位を測定。調査を行ったアイオワ大学カーバー医学校 (University of Iowa’s Carver College of Medicine) の研究者らは、こうしたスキャンをそれぞれの被験者に年2回から5回行い、精神病患者、特に妄想的な思考、幻覚および認知障害のある統合失調症患者の脳が、正常な精神状態にある人に比べて小さいことが長期間認められる原因を追究。最も脳質量の減少が大きかったのは、「集中的」に抗精神病薬の薬物治療を受けた患者、つまり最も長期的かつ最大用量の投薬を受けた患者であることが判明。精神症状の重症度、違法薬物、アルコールなどの乱用度よりも抗精神病薬による薬物治療の「集中度」のほうが、はるかに強力な脳質量減少の予測因子であることを研究者は発見した。容積の減少は脳の随所に見られ、脳の異種領域や左右脳半球間の伝達経路を形成する結合"白質"、また脳葉のほとんどを構成する脳細胞の密集した塊である灰白質でも起きていた。



12.The effectiveness of electroconvulsive therapy:A literature review
「電気痙攣療法の有効性: 文献レビュー」
このニュージーランドのジョン・リード (John Read)とイギリスのリチャード・ベントール (Richard Bental) による最近の研究では、「(電気痙攣療法による)治療中に改善を見たことを示すエビデンスは殆ど存在せず、その後に改善したことを示すエビデンスは全く存在しない」「長期的、あるいは患者によっては永続的な脳機能障害を引き起こす強力なエビデンス」としたうえで、「ECTの費用対効果分析はあまりにお粗末で、科学的に正当化できるものではない。・・・したがってECT の使用を続けることは、精神医学には科学的根拠に基づく医療 (EBM) が取り入れられていないことを示すものである」が論文の結論。



13."Antipsychotics increase a person’s biological vulnerability to psychosis"
『抗精神病薬は精神病に対する生物学的脆弱性を増す』
1970年代、研究者は抗精神病薬がD2受容体として知られるドーパミン受容体のある特定の亜型(サブタイプ) をブロックすることを発見。そのブロックに反応して脳がD2受容体密度を増加させる。こうしてドーパミンに対して「過敏」になり、それによって生物学的にさらに精神病に対して人は脆弱になるのではないかと、2人のカナダ人医師、ガイ・シュイナード (Guy Chouinard)、およびバリー・ジョーンズ (Barry Jones) は推論した。統合失調症患者が抗精神病薬の服用を停止しようとすると再発し、長期にわたって薬物治療を受けているにもかかわらず悪化することが多いのは、これが理由ではないかと推論。そして、長期的には多くの患者が「遅発性精神病」を発症し、そうなると「以前にも増して症状が悪化したように見える」ことを二人は報告した。



14.イリノイ医科大学のマーチン・ハロウ (Martin Harrow) が1980年代から追跡調査を始め、2007年に発表した統合失調症患者群の15年転帰にまつわる研究がある(2)。抗精神病薬の服用がなかった患者の40%が15年の終わりに回復していたのに対し、服用していた患者では5%であった。またハロウは、それよりも軽度な精神障害の患者についても報告しているのだが、やはり同じように抗精神病薬を服用していない患者の方が、はるかに状態が良かったのである。



15.抗精神病薬と長期の行動機能障害
メリーランド大学とレスブリッジ大学 (カナダ) の研究者による二つの関連研究では、オランザピン (ジプレキサ) への幼少期の暴露による長期的影響を中心に研究された。その一つ目の研究では、生後28日目から3週の間、オランザピンにラットを被爆させる。成長後、これらのラットには「作業記憶に有意な障害があった」とする。また、「社会的に目新しいものに反応しやすく、また強く反応した」と研究者。メリーランドとレスブリッジの研究者は、「これらのデータは、オランザピンへの青年期の暴露は、ドーパミン作動性機能における変化と一致する長期の行動欠陥パターンを引き起こすことを示唆する」と結論。もう一つの研究では、オランザピンに暴露させたマウスでのドーパミン機能の長期変化が調べられた。幼年期暴露の4~6ヶ月後、「大人の」脳のドパミン受容体の結合活性が、標準とは有意に異なっていたとする。
「生後早期の抗精神病薬への暴露は、長期に及ぶ機能的に有意な変化を、神経回路に引き起こす可能性がある」というのが研究者の結論。そして、「人間で言えば胎児期、あるいは幼児期にあたる段階での作動性神経伝達を調節する薬への暴露は長期の行動機能障害をもたらすことを、ますます多くの動物実験が示すようになってきている」とする。



16.米国国立精神保健研究所が実施した最初のフォローアップ研究
『退院一年後』Schooler, N. American Journal of Psychiatry 123 (1967): 986-995.
概略:入院時に神経遮断薬による治療を受けた患者とプラセボのみを服用させた患者合計299人の1年後転帰を調査。米国国立精神保健研究所が初めて実施したこの長期研究では、プラセボ投与を受けた患者群のほうが「3種類の活性フェノチアジンのうちのいずれかを服用した患者よりも再入院率が低かった」ことが判明。



17. 米国国立精神保健研究所が実施した再発に関する最初の研究
『精神安定剤服用の慢性統合失調症患者による突然の服薬中止後に起こる再発』Prien, R. British Journal of Psychiatry 115 (1968): 679-86.
概略:再発率は服用量に直接関連することが判明。抗精神病薬の服薬中止前の量が多ければ多いほど再発率は高かった。研究開始時点においてプラセボを与えられていた患者18名のうち、半年で悪化した患者はわずかに1人 (6%)。研究開始時にクロルプロマジンを300 mg 服用していた患者64人のうち、服薬中止後に54%が悪化。研究開始時にクロルプロマジン300 mg 以上を服用していた患者116人のうち、服薬中止後に66%が悪化。(p.684 図3 参照)



18. 米国国立精神保健研究所が実施した再発に関する研究
『慢性統合失調症患者への化学療法の中止』 R. Hospital and Community Psychiatry 22 (1971): 20-23.
概略:再発率が抗精神病薬の服用量と相関して上昇することを発見した最初の研究の確認となる米国国立精神保健研究所による研究。研究開始時点においてプラセボを投与されていた患者30人のうち24週中に悪化したのはわずかに2人(7%)。研究開始時点に300 mgを超えない範囲でクロルプロマジンを服用していた患者99人のうち、投薬中止後に再発した患者は23%。300 mg から 500 mg の間で服用していた患者91人のうち52%が再発。500 mg 以上のクロルプロマジンを服用していた患者81人のうち再発したのは65%。研究者は、「再発は患者がプラセボを投与される前に服用していた精神安定剤の量と有意に関連する-量が多ければ多いほど再発の可能性が高い」と結論。(p.22とp.23 参照)



19. ソラジン(クロルプロマジン)登場前と登場後の、5年転帰の比較
『2つの5年追跡調査の比較』Bockoven, J. American Journal of Psychiatry 132 (1975): 796-801.
概略:ボストンの精神科医、Sanbourne Bockoven と Harry Solomon による薬物治療が始まる前と始まった後の時代での再発率の比較研究において、薬物治療が始まる前の時代ほうが良かったことが判明。1947年にボストン精神病院で治療を受けた患者の47%が退院5年後時点において再発がなく、76%は追跡調査期間終了時に地域での社会生活がうまく行われていた。対照的に1967年にボストン・コミュニティー・ヘルス・センターにおいて薬物治療を受けた患者のうち、その後5年間再発がなかったのは31%で、1947年の患者集団よりも全体としては福祉などの"社会的依存"がはるかに高かった。また、1940年代と1950年代のはじめのニューヨーク精神病院での再発率をレビューした他の研究者らも同様の報告をしており、退院した統合失調症患者のおおよそ50%は追跡調査期間中も長期にわたり継続して良い状態を保ち、これは神経遮断薬を使った転帰よりも顕著に優れていると報告している。



20. 『薬物を使わない急性統合失調症の治療』W. American Journal of Psychiatry 134 (1977): 14-20.
概略:1977年に米国国立精神保健研究所が行った研究。心理社会的サポートを提供する病院の実験プログラムに参加した49人の統合失調症患者を投薬治療を受ける集団と受けない集団とに無作為割り付け。退院1年後に再発したのは非投薬集団ではわずかに35%であったのに対し、投薬治療を受けた集団では45%であった。また、うつ、感情の鈍化、緩慢な動作に苦しむ患者も投薬治療を受けた集団に多くみられた。



21.『薬物を必要としない、もしくは禁忌とする統合失調症患者は存在するか』M. International Pharmacopsychiatry 13 (1978):100-111.
概略:カリフォルニア大学のMaurice Rappaport らが1978年に行った研究。アグニュー州立病院に統合失調症で入院する若年男性患者80人を投薬治療を受ける群と受けない群に無作為に割り付け。退院3年後に再発したのは投薬治療を受けなかった群ではわずかに27%であったのに対し、投薬治療を受けた群では62%であった。中でも注目すべきは、入院中に投薬治療を受けず、退院後も投薬治療を受けなかった患者
24人のうち、その後に再発したのはわずか2人であった。研究終了時、この投薬治療を受けなかった患者24人は投薬治療を受けた患者よりも著しく高い機能が見られた。



22. ソテリア・プロジェクト
概略:1970年代、米国国立精神保健研究所の統合失調症研究部門で局長を務めるローレン・モッシャー(Loren Mosher)が行った実験。抗精神病薬剤の使用を少量にとどめた家庭的な環境(ソテリア)の中で行う治療と、病院内で行われる従来の治療との比較研究。2年後、ソテリアの患者は従来の抗精神病薬で治療を受けた患者に比べ、「精神病理学スコアーが低く、(病院への)再入院が少なく、また全体的適応性も良好」であった。プログラムを終え、その後も神経遮断薬を服用せずに2年のうちに再発したのはソテリア・ハウスで薬剤を使わない治療を受けた患者ではわずかに31%であった。



23.『神経遮断薬を使わない統合失調症治療』S. Schizophrenia Bulletin 5 (1979), 322-332.



24.『統合失調症の地域居住型治療』L. Hospital and Community Psychiatry 29 (1978), 715-723



25.『神経遮断薬を使わない急性精神病治療』L. International Journal of Social Psychiatry 41 (1995).



26.『抗精神病薬による維持療法』 Cole, J. American Journal of Psychiatry 132 (1977).
概略:米国国立精神保健研究所精神薬理学サービス・センターの元所長、ジョナサン・コールが1977年に行い、抗精神病薬が無数の問題の原因であることを考えると「抗精神病薬による維持療法を受けている外来患者全員が薬剤を使わない適切な試みをためしてみるベネフィットを与えられてしかるべきであった」と結論。彼が論文につけたタイトルは「悪いのは病気よりもその治療薬?(Is the Cure Worse than the Disease?)」



27. 薬剤性の過感受性精神病
概略:1970年代後半にマクギル大学の二人の医師、ガイ・チュイナードとバリー・ジョーンズが、薬物治療を受ける患者の高い再発率につながる抗精神病薬の引き起こす脳内の生物学的変化を確認。薬剤がドーパミン活性を抑制することで、脳はそれを補おうとドーパミンに対して"過感受"になる。特にドーパミン受容体密度の増加を薬剤が誘発している。ドーパミン機能の擾乱は長期的には患者が生物学的に精神病を起こしやすくなり、薬の投与中止で悪化して再発する。「神経遮断薬は、運動障害および精神病症状そのどちらをも引き起こすドパミン過敏性を起こしうる。そのような過敏性を発現した患者が精神病を再発しやすいのは、単に精神疾患の自然の成り行きで決まるものではなさそうである」が、チュイナードとジョーンズの結論。



28.『神経遮断薬の投薬後に起きるドーパミン作動性の過敏性』 Muller, P. Psychopharmacology 60 (1978):1-11.



29. 『神経遮断薬によって引き起こされる精神病』: Chouinard, G. American Journal of Psychiatry 135 (1978):1409-1410.



30.『神経遮断薬によって引き起こされる精神病』: Chouinard, G. American Journal of Psychiatry 137 (1980):16-20.



31.『神経遮断薬によって引き起こされる精神病、その「駝峰」と遅発性ジスキネジア』Chouinard, G. Journal of Clinical Psychopharmacology 2 (1982):143-4.



32. 世界保健機関(WHO)による研究
『統合失調症に関する国際的予備調査』Leff, J. Psychological Medicine 22 (1992):131-145.
概略:統合失調症の転帰を先進国と途上国で比較した『統合失調症に関する国際的予備調査』と題されたWHOによる初の調査。1968年に始まり、9ヶ国、患者1202人が対象。追跡調査開始2年後、5年後、どちらも途上国の患者のほうが状態が良かった。研究者の結論は、途上国の統合失調患者は「先進国の患者よりも経過、転帰、ともに良かった。その結果は臨床転帰、社会的転帰、あるいはその両方を考え合わせても同じであった。」インドとナイジェリアでは3分の2患者が、5年後の調査終了時には症状もなかった。しかしWHOの研究者はこうした転帰の明らかな違いを説明する変数を特定できなかった。p.132,142,143 参照



33. 『統合失調症: 異文化における予兆と罹患率、そして経過』Jablensky, A. Psychological Medicine, supplement 20 (1992):1-95.
概略:「重度精神障害の転帰決定要因」と題されたWHOによるこの種の調査としては2度目のもの。10ヶ国、1379人の患者を対象とし、『統合失調症に関する国際的予備調査』のひとつの追跡調査としてデザインされた。調査対象となったのは初回エピソード患者で、うち86%が発症1年以内であった。結果は1度目の調査を確認するかたちとなり、2年転帰は途上国の患者のほうがはるかに良かった。大まかには、途上国(インド、ナイジェリア、コロンビア)の患者は、37%が一度の精神病エピソードを経験しただけで、のちに全快。26.7%は2回もしくはそれ以上の回数で精神病エピソードを経験していたが、それでも2年の終了時には"完全寛解"していた。つまり、途上国では患者の63.7%が2年の終了時にはかなり良い状態にあったことになる。それに比べてアメリカやその他の先進国6ヶ国では、2年の終了時にかなり良い状態にあったとされる患者は、わずかに36.9%であった。研究者はこのように結論する-「先進国にいるということが、完全寛解に至らない強力な予知因子である。」WHO の研究者はこの転帰の違いを説明できる変数を確定していないが、途上国では継続的に神経遮断薬による維持療法を受けていたのはわずかに15.9%であったのに対して、アメリカやその他の先進国では61%の患者が神経遮断薬による維持療法を受けていたことを指摘している。



34. バーモントの経時的研究
概略:1950年代から1960年代の初めにかけてバーモント州立病院に入院していた統合失調症患者の転帰を調査した長期研究。20年後、25%から50%の患者が完全に薬剤を断ちながら統合失調症の症状もその兆候も見られず正常な生活を送っていたことを報告。統合失調症の患者は生涯薬を飲み続けなければならないというのは「作り話」であり、現実には「生涯薬を必要とするのはごく少数であろう」が結論。



35.『重度精神疾患を持つ人のバーモントにおける経時的研究 Ⅱ』 Harding, C. American Journal of Psychiatry 144 (1987):727-734
b) 『統合失調症治療にまつわる7つの虚構、その実験的補正』Harding, C. ACTA Psychiatrica Scandinavica 90, suppl. 384 (1990):140-146



36. 転帰論文のメタ分析
a) 『統合失調症の100年』Hegerty, J. American Journal of Psychiatry 151 (1994):1409-1416
概略:アメリカの統合失調症患者の転帰は1970年代から悪化し続けており、1900年の状態と同じレベルにまで低下しているとするハーバード大学メディカルスクールの研究者による報告。抗精神病薬をその原因としているわけではないが、統合失調症の患者は、生涯にわたって薬を服用する必要があるとアメリカの精神医学が言いだした時期と一致することは注目に値する。つまり、生涯ずっと薬物治療を受け続けることに重点をおいた治療パラダイムが採用された時期とこの転帰の悪化は一致している。



37. MRI 研究
概略:1990年代、抗精神病薬が前頭葉に委縮をもたらし脳幹神経節に拡張を起こすことが MRIの技術によって明らかになった。この「フォローアップ磁気共鳴映像法」研究では、脳幹神経節の拡張が統合失調症の陽性、陰性の両症状の悪化に関連するとする。薬剤が時間の経過とともに慢性疾患を引き起こすことの強力なエビデンスとなる研究。



38.『抗精神病薬を服用する統合失調症初回エピソードの患者の尾状核体積の増加』Chakos, M. American Journal of Psychiatry 151 (1994): 1430-1436



39.『精神疾患での脳の進行性構造的異常における神経遮断薬』Madsen, A. The Lancet 32 (1998):784-785



40.『統合失調症治療において神経遮断薬の服用のない患者とある患者の皮質下の体積』Gur, R. American Journal of Psychiatry 155(1998) 1711-1717



41.『MRIを使った統合失調症の追跡調査』Gur, R. Archives of General Psychiatry



42. 遅発性ジスキネジアと広範囲にわたる低下
概略:抗精神病薬の長期使用により脳内のドーパミン経路が不可逆的に機能不全となりうる。それが運動障害(遅発性ジスキネジア)、重篤な精神病の症状(遅発性精神病)、広範囲な認識低下(遅発性認知症)を起こす可能性があるとする。



43. 『治療に神経遮断薬を使う患者の遅発性ジスキネジア』Crane, G. American Journal of Psychiatry 124, supplement(1968):40-47



44. 『20年目の臨床精神薬理学』Crane, G. Science 181 (1973):124-128



45. 『遅発性ジスキネジアにおける機能障害』Yassa, R. Acta Psychiatrica Scandinavica



46. 『遅発性ジスキネジアにおける注意気分障害の中心的決定要因』Myslobodsky, M. Brain and Cognition 23 (1993):88-101.
e) 『統合失調症における認知障害』Waddington, J. Brain and Cognition 23 (1993):56-70.



47. 『遅発性ジスキネジアに対する定型 対 非定型抗精神病薬の有効性』De Leon, J. Eur. Arch. Psychiatry Clinical Neurosciences 257 (2007): 169-172
非定型抗精神病薬を投与された患者の20%が5年以内に遅発性ジスキネジアを発症。通常の神経遮断薬と同じ割合。



48. 『抗精神病薬の神経病理学的有効性』Harrison, P. Schizophrenia Research 40 (1999): 87-99



49. マーチン・ハロウの15年転帰の結果研究
概略:米国国立精神保健研究所の資金提供により行われた統合失調症患者の長期転帰に関する追跡調査。1980年代後半にシカゴ地区にある2つの病院で統合失調症の診断を受けた患者を対象に行われたこの研究では、15年で抗精神病薬の服用をやめていた患者の40%が回復していたのに対し、服用を続けていた患者では5%であった。統合失調症以外の精神障害のあった患者も抗精神病薬の服用を続けていた患者よりも服用をやめていた患者のほうが状態ははるかに良かったと報告している。



50."Antipsychotic Drugs for Dementia To Be Curbed in U.K."
英国、認知症に対する抗精神病薬の使用に歯止め
11月12日 (ブルームバーグ) -- 英保健省の委員会報告書によると、英国内の認知症患者は危険な抗精神病薬を過剰に投与されており、それによって年間1800人に上る患者の死亡、1620人が発作を起こしているロンドンで行われた記者会見では、「毎年、高齢の認知症患者、約180,00人が抗精神病薬を投与されているが、それにより改善が見られる患者はわずか20パーセントである」と教授。なんと三分の二にあたる患者は、早期死亡リスクを高め、鎮静、筋硬直、思考の乱れ、発話障害など、多くの副作用がある薬剤を投与されていながらも、何らのベネフィットも得てない。2005年、米国食品医薬品局は抗精神病薬を製造する製薬会社に対し、認知症高齢患者では早死にのリスクが高まることを、黒枠警告で薬品添付書に記載することを求めた。その2年後に発表された英国での研究では、抗精神病薬を服用する患者は、服用のない患者に比べ、死亡時期が6か月早まることが分かっている。



51.2009年10月27日、アメリカ医学界で最も権威のある学会誌とされ、マスコミの注目度も高いJAMA誌において、「Cardiometabolic Risk of Second-Generation Antipsychotic Medications During First-Time Use in Children and Adolescents-子供や若者における第二世代抗精神病薬の初回使用における肥満心代謝異常リスク」と題された強力な研究論文が発表され、成人に投与した場合に比べ、はるかに短期間かつ高率で激肥りを起こすことが明らかとなりました。
ジプレキサ 平均体重増加 8.5キロ BMI値 +3ポイント (3ヶ月)
セロクエル 平均体重増加 6.0キロ BMI値 +2.12ポイント (3ヶ月)
リスパダール 平均体重増加 5.3キロ BMI値 +1.92ポイント (3ヶ月)
アビリファイ 平均体重増加 4.4キロ BMI値 +1.67ポイント (3ヶ月)
血糖値の平均上昇 ジプレキサ 3.14 mgs/dl 、セロクエル 2.64 mgs/dl
コレステロールの平均上昇 ジプレキサ 15.585 mgs/dl, セロクエル 9.05 mgs/dl
比較対象グループ(投薬による治療なし) 変化なし



52.統合失調症治療薬ジプレキサ、カナダで「特許は無効」との判決
去年1年間の売上が四千五百億円に上り、総収入の28パーセントを占める超ベストセラー抗精神病薬、ジプレキサ。重篤な副作用を隠して違法に販売したとして訴えられ、全米各州で連戦連敗(和解金支払い)。またアメリカでの特許が2011年に切れることから、一千億円の支出削減や五千五百人の人員カットに追われるイーライ・リリー社。 そうした中、今月初め、「カナダにおけるジプレキサの特許は無効である」との裁定が下されました。



53.抗精神病薬による死亡者数 - FDA 有害事象データベースより
クロザピン 3,257名
セロクエル 2,139名
ジプレキサ 3,442名
http://www.fdable.com/aers/advanced_query/02b63aebd26a
リスパーダル2,827名
http://www.fdable.com/aers/advanced_query/13d9ac9ebccb



54. "Early intervention for psychosis"
◎ オランザピンにベネフィットはない
◎ 認知行動療法 (CBT) にベネフィットはない
◎ リスペドリン + CBT + 専門チーム(早期介入多職種連携チーム/アウトリーチ)にベネフィットはない (12ヶ月)
◎ 自殺傾向のための認知行動療法に効果はない
◎ 家族療法 + 専門チームの介入は再発に影響しない
◎ 専門チームの介入は平均入院日数に影響しない
Max Marshall1,*, John Rathbone2Editorial Group: Cochrane
Published Online: 15 JUN 2011
Assessed as up-to-date: 3 JUN 2009



内海聡医師より



スポンサーリンク